気密性能を上げる利点のひとつとして、計画どおりの換気を行いやすい、ということがあげられます。 下のグラフは目にした方も多いかもしれません。気密性能と隙間からの給気量の関係です。 設計、立地、自然条件など様々な要因で異なるだろうが目安にはなりそうです。 グラフを見ると気密性能が2cm2/m2では、給気口からは33%の外気(グラフの赤点)を取り入れ、残りの67%は隙間から、ということになります。 隙間が換気扇の近くにあればあるほど、そこから外気が入ってくる割合が高くなり、家全体を換気できなくなってきます。これがショートサーキットです。 家全体をきちんと換気しようと計画する場合、給気口は換気扇から遠い位置の居室などに設けられることが多いのですが、そこからの給気量は減ってしまいます。 ということは、一番新鮮空気が必要な場所にはあまり供給されなくなる、ということに。 当然隙間には給気口のように外気の汚れを取り除くフィルターはありません。 たまに浴室やトイレなどの窓を開けっぱなしにしている人がいますが、そこについている換気扇を24時間換気として利用しているとすれば、同じ理屈で”窓が大きな隙間”となり家全体の換気は期待できなくなります。 気密性能が0.5cm2/m2だと70%(グラフの青点)が給気口から入ってくるので2倍以上です。 個々の給気口を見ていくと、給気口が排気口になる場合もでてきます。 前回のブログにあるように室内外の温度差が大きい場合(冬期の暖房時)、室内の空気には上昇圧力が加わります。 気密性能が低いと換気扇が引っ張る力(内に向かう圧力)よりも上昇圧力(外に向かう圧力)が大きくなってしまい、空気が逆流して主に2階の給気口が排気口になってしまう場合もあります。 参考にパナソニックさんのwebから画像を拝借してきました。 グラフを見ると室内外温度差が20℃のとき、気密性能が1.5cm2/m2よりも悪くなると、逆流して2階の給気口から排気をします。(マイナスなので) 排気口になると何がいけないのか、と思うかもしれませんが、その場所には新鮮な空気が入ってこず、他の部屋などを経由して汚染された空気がまわってくることになります。 人が長い時間過ごす場所(居室など)に新鮮空気を、という考え方の原則は崩れてしまいます。 そして2階の給気口から排気された分の空気が、主に1階の隙間から外気として入ってくることになるので1階の暖房効率はさらに下がることになります。 これを解消にするには熱交換換気などの第一種換気をつけて、人がいる場所に強制的に給気をすることが考えられるが、これも前回のブログにあるように、そもそも気密性能が低いと漏気が多くなって熱交換換気がうまく機能しない、といったことになる。 このように気密性能が低いと、換気計画が絵に描いた餅になる可能性がありますのでやはり気密測定は必須、そして第3種換気の場合、可能なら冬の暖房時に給気口からきちんと給気できているか換気測定した方が良いと思います。 これは私の感覚で恐縮ですが、気密性能がそれほど高くない家へお邪魔させて頂くと、24時間換気は動いているのに空気が淀んでいたり匂いが残っていたり、ということを感じたケース、結構ありました。気密性が2cm2/m2だと言っていた家でも、です。
by takakoun
| 2020-11-27 14:15
| 高断熱高気密
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